名も無き花
「……帰ったら絶対声も出ないような地獄を……」

「ん、どうかした?」

水谷さんが疑問符を浮かべて顔を覗きこんでくる。

「いや、俺も歳かなぁ?と思って。」

苦笑いしながら答えた。

「えー、そしたらあたしも歳ってことー?」

意地悪な目付きで返して来た。

「そーいう事になるね」

一呼吸置いて神妙な表情で軽い冗談を言って見せた。

「ひどーい♪」

……まぁ、これはこれで来た甲斐あったのかな?

「ところで、水谷さんは何で大学来てるの?」

「えっとねぇ……」

一瞬瞳が曇ったような気がした。

「レポート!今、レポート出して来たんだよね。昭ちゃんがあまりに面白いから忘れちゃったよぉ。」

「そっか……もう暇なの?」

「うん、暇だよ?」

「じゃぁどっか行かない?」
気付いたら誘ってた。小林さんには悪いけど……付き合っているわけじゃないし良いよね?

「ほんとー?」

満天の笑顔が目の前に咲いた。
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