名も無き花
「あ!、あいちゃんだぁ」

一人の女の子が、高い声を上げながら青年に近寄ってくる。

「どしたの?焦ってるみたいだけど…。」

そう、俺は焦って家に引返す最中なのだ。だけど、呼び止められてしまったのでシカトするわけにも行かないし、何より彼女は可愛い。

って、そうじゃない。この子誰だ?…思っても聞ける空気じゃないな。

そして、普段暗くて地味で大人しいというか、存在感薄い俺のあたまん中は何でこんなに落ち着きを無くしているんだろう?


……

「ちょっと、あいちゃん聞いてるのー?」

彼女の声が俺の意識を現実に引き戻す。

取りあえず、軽く頷いてみた。しかしあいちゃんは辞めて欲しい…。
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