名も無き花
ある日、うちが彼と部屋でイチャイチャしていたら、突然姉が部屋に入って来て

「ゆうきぃー!ちょっとその彼貸して」

そう言うなり、うちの彼の腕を掴んで出て行ってしまった。彼も何がなんだかわからずあっさりついて行っちゃうし、部屋に1人取り残されたうち。

姉の部屋で鍵をかける音がしたと思ったら、メールが届いた。

『彼、貰うね♪』

目を疑う悪魔のメッセージ。
正直、姉にかかれば童貞の彼を墜とすことくらいわけない。魅力薄のうちと比べてうちが姉にかなうはずがない。

諦めの念が意識を支配した瞬間、心にひびが入るような音が聞こえた。

絶望がうちの自制心を貫いた。

部屋に響く絶叫

崩壊する家具

床に頭を打ち付ける
興奮のせいで痛みはなかった

壁を殴った
殴る殴る殴る殴る殴る…

拳が打ち付けられる度に体に響く痛みもすぐに麻痺した。

壁の砕ける派手な音

拳の砕ける鈍い音

飛び散る壁の破片と血液

左手で椅子を掴むなりドアに向かって投げた

ドアが壊れる

その先には姉の部屋のドア

ドアの向こうから聞こえる姉の喘ぎ

その声にうちひしがれる

再び絶叫
喉が一瞬で痛んだ

構わなかった
何も考えられない

叫ぶしかできなかった
暴れるしかできなかった


無力な子供の様に…
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