名も無き花
「あ、はいこれで買って!」

姉にお金を手渡す。

「うん、ありがとっ♪」

弾んだ声と笑顔が店内へ吸込まれて行く

…あの日から姉はうちの精神を縛り、うちは姉の体を縛った。

悪魔に魂を売ったわけではないが、悪魔の契約より残酷であろう二人の絆はあまりに曲がっている。

そんなことは、分かっている
だけどお互いを求める欲に、うちら姉妹は負けた。

悪魔の様な独占欲、姉の笑顔はうちのタメだけに存在しなくてはならない。姉のカワイィ声はうちにだけ届けばいい。

姉がほかの人間と言葉を交わすなんて耐えられない。それがレジの店員であっても、これからできるかもしれないうちの恋人であっても、うち以外の家族であっても…。

だが、そーゆわけにもいかないのは至極当然のことだ。あの日から意識をちりばめる努力と苦痛に耐える日々。

その束縛の証しが、この金メッシュ。これは姉の趣味だ。うちとは趣味が違う姉に頼まれてやった一種の妥協。そして姉の笑顔に自分を燃やす誓い。

「おまたせー」

「ん、じゃあ本命の所へいこか」

弾むステップで向かう地獄への一本道
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