私の彼氏はバッテリー
降りる駅に着いた頃には涙は止まっていた。
「ごめん、せっちゃん」
手を合わせて謝る。
「ううん、落ち着いた?」
「……うん」
帰路につく2人。
夕日が沈み始め、その逆の空は暗さが増してゆく。
「今日言うの?」
ユミは頭を振る。
「今日は言えない…」
「そう」
しばらく歩き、分かれ道に来た時。
「ー明日言おうと思う」
「頑張って」
せっちゃんはニコリと微笑み、バイバイした。
街路に街灯がつき、その中を歩くユミ。
頭の中では、彼の事でいっぱいだった。
今もまだ耳に残っている、あの声。
『しまっていこうぜぇぇえっっ』
彼らしい声で、彼らしくなかった声。
痛いはずの足を抱えながら、必死にキャッチャーとしての仕事をこなし、結局その間は1点も許さなかった。
数々ある今日の彼のプレー。
『ーこのまま付き合うつもり?』
………リョージ……
もう、家の前に立っていた。
晩御飯を済ませ、部屋に入り、彼からの連絡を待つために、携帯を手に持つ。
ーその日、彼から連絡はなかった。