私の彼氏はバッテリー
再び、木崎を見つめるユミ。
「バッテリーって…大変なんだね」
「ね、すごいでしょ」
休憩に入ったのか、グラウンドにいた野球部の人らが控え室に戻ろうとしている。
彼、木崎も戻ろうとすると、こちらに気付く。
「!」
思わず、顔を伏せるユミ。
木崎はこっちに向かって走り出す。
ガチャガチャと音をたてて。
ネット越しに木崎が前に立っている。
ー恥ずかしくて、顔を見ていられなかった。
「来ていたのか」
昨日と同じ声。
ちょっと高くて、厚みのある質。
「久しぶり、木崎。」
挨拶をするせっちゃん。
「お、橋川も見に来てたんだな。今日はどうしたん?」
「野球部の様子を見に来たのよ、ちゃんとやってるかな~って」
「ははっ、監視されてるみたいだな」
そう言い、野球児らしい笑顔を見せるが、顔を伏せているユミからは見えなかった。
「ユミ、何か言ったら?」
せっちゃんからそう言われ、少し顔をあげる。
はっきりとした笑顔。
汗のせいか、光って見えていた。
「えっと…あの…バッテリーって大変だね」
頑張って考えたけど、これしか言えなかった。
彼はもっと笑顔になりー…