刹那

私誰


でも…
あたしに明日はなかった。
変わりに、違う今日があった。

「ゆーり?」

ゆっくり目を開けると人がいた。
かなり暗いおばさんと同い年くらいのショートカットの女の子。
それに、お医者さん…かな?

「優李!大丈夫!?!?」

誰なんだろう?
あたしに向かって、
「ゆうり」
って言ってるこの子…。

「中村さん、どうですか?」

…中村さん?
…誰、それ?

「優李!?どうなの!??」

おばさんまで…。
みんな、あたしのこと、「ゆうり」って言ってる…。
けど…
あたしは…誰なの?
「ゆうり」なの?

「中村さん、この人が誰か。
 分かりますか?」

お医者さんは暗いおばさんを指してそう言った。

「…いえ。誰ですか?」

あたしは、正直に答えた。

「…ウソでしょ?
 ねぇ…ウソでしょ!?優李ッ!!!
 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

おばさんが大声を上げて泣き出した。

「…優李?っホントに分かんない?」

女の子も聞いてきた。

「はい。ごめんなさい。」

あたしは、謝るしかできなかった。

「中村さん、今日は休んでください。
 明日、精密検査をしましょう。」

お医者さんが言った。

「…はい。」

あたしは、泣いている2人に背を向けて横になった。

「中村さん」と呼ばれたり
「優李」と呼ばれたり
あたしは…誰なの?
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