Pinky
急に黙られるとなぁー…。
「さ、さっきさ、佐恵子さんに会ったんよ。」


「…ああ。今、俺も鈴もこっちに転校したから引っ越すんだってさ。」

「そ…そうなんだ。んじゃこれからまた会えるようになるやん。楽しくなるなぁ。」



思ってる事とは反対の事を言ってしまう。

遠慮するよ。
南のお母さんなんやから。


「……。」

南はまた黙る。



「あ、あのさ…」

もう話すネタ無くなってきたな。


どーしよ。


「…俺さ……。」




ビクーッ!!!!


いっ、いきなり話し出すなよ…!

びっくりしたー…。



「…なんでもない。」





「なんやねん、言いたいことあったら言ってや?」

南が自分から自分の事話すなんて珍しい。

「…。」


南は黙ったままずっと一点を見つめている。


何見てるのか気になり、南の視線の先を見た。

そこにはこの間、啓とお兄ちゃん達と行ったテーマパークでの写真があった。


勇斗兄ちゃんがへばってるのをお兄ちゃんが気にしてて、啓は私の肩を抱いて大きくピースしている写真。

すごく気に入っていたから机の上に飾っていた。




あの幸せだった時に…

不安も何も感じてなかった時に戻りたい。

今その写真を見るとそう思う。


「こいつ…、この隣にすんでるよな?」

「啓のこと?」


「…。」

「そうやで。幼馴染みやもん。」
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