Pinky
「ちょ…何言って…!」

慌てる啓。


またいつもみたいに「美緒は俺から離れられへんねん。」とか言って引き留めてくれるんかな。

私の期待に添うように、さっ君が言った。


「大事な美緒ちゃん、取られてもええんか?」


すると…



「…ええよ、別に。勝手にどこにでも連れてけば?」



そう、言ったのだ。


「あ、そう。んじゃ、連れてくわ。」

そう言ってさっ君はうつ向いて何も話さない私の手を引っ張って歩き出す。


啓が家に入る音がした。

「…もう啓、外におらへんから泣いても大丈夫やで。」


その言葉を聞いた瞬間、私は泣き出してしまった。


さっ君に背中を擦られながら夜道を歩く。

それから数分で近くのコンビニに着いた。


「ちょ、母さんに頼まれたもん買ってくるから、ちょっと待ってて。」

「うん。」



それからちょっとたって、さっ君が出てきた。

「はい。ついてきてくれたお礼。」


アイスのカップを私に渡してくれた。


「あ…ありがとう。」


それから、帰り道にでも通る土手の上に登ってアイスを食べようと提案された。
そして夜風に当たりながらアイスを食べる。



「さっ君、ホントは仲直りさせようとしてくれたんやろ?…ありがとう。」

私はゆっくりした口調でそう言った。


「まさか啓があんなこと言うなんて想像してなくてさ。いらん事言ったな。ごめん。」

「ううん、そんなことないで?私も啓も意地っ張りやから、あのままやったらどうせ仲直りなんか出来へんかったし。」
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