涙の雫が地球を癒す時

「…悠太…悠太ってば…」

　私はバイクの点検をしている悠太の洋服の裾を引っ張った。

「…ん？」
「ね、後ろ…後ろ…やばいって…」
「何が？」

　悠太は私たちの後ろに居る龍に気付かずにバイクの点検を続けていた。

　そして私と龍は目が合ってしまい、龍はにやぁと笑うと舌なめずりをした。

「龍～！！いやぁ～！」

　私はそう叫ぶと悠太を置いて一目散に逃げ出した。

　龍という言葉を聞いた悠太は振り返り、龍を見るなり驚いてバイクを捨てて
逃げ出した。

「どうしてもっと早く教えてくれないのさ～！」
「教えたよ！悠太が聞かなかったんじゃん！」
「とにかく今は逃げよ～！」

　私と悠太はひとまず逃げることに専念しようとした。
それより、一体何々だろうこの世界は？
龍？何故龍が此処に？

　そういえば大雨が振り出す前に時空が揺れたことを思い出した。
あれはもしかした未来の世界と現在の世界を繋げるものだったのかもしれな
い。

　そう思って逃げていた矢先に私は体が宙に浮いていた。

「え？え？え？！」

　上を見ると一匹の龍が私を連れ去ろうと悠太に借りた洋服のフードを口で掴
んでいた。

「う、く、苦しい～…っ～…」

　そして私は意識を無くした。

　龍は私を上に放り投げ、背中に乗せるとそのまま飛び去っていった。

「空澄霞！！…何々だよこの世界は！」

　悠太は後ろに居る龍の隙をついてバイクのところへ走り、二つのヘルメット
を持つと龍の横を通り抜けて私を追いかけようとしていた。
ところが悠太の近くに居た龍が悠太のバイクを掴み、悠太を捕まえてしまっ
たのだ。

「な、何すんだよ！このままじゃ空澄霞が…って、おい！！」

　龍は大口を開けて悠太を一のみにしようとしていた。
このままではまずい、そう思った悠太は思い切りアクセルを踏み、排気ガスを
龍の口の中にお見舞いしてやった。

「フガーッ！！」

　龍は変な声を上げて叫ぶと悠太をバイクごと放り投げた。
悠太はちゃんと地面に着地し、連れて行かれた私を追いかけて行った。

「空澄霞～！」