涙の雫が地球を癒す時
 私達は小さな建物の屋根の下に逃げ込んだ。
もう殆ど洋服は破れた状態で、買ったばかりの洋服が台無しになってしまっ
た。
すると悠太が上着を私に掛けてくれた。

「悠太…これ…」
「風邪引くから着てなよ。俺は平気だから。」
「…ありがとう…」

 私は悠太に掛けてもらった洋服をちゃんと着ると、悠太の腕にしがみつきな
がら雨が止むのを待った。

 だが、それから何時間経っても雨が降り止むことは無く、空は泣いているよ
うに雨を降らし続けていた。

「…雨…止まないね。」
「…そうだね…空澄霞、お母さんとかに電話しなくて平気?」
「うん、平気だよ。だってお母さん…今頃病院だもん。病気…悪化しないと良
いけどな…」
「あ…ごめん…俺…」
「…え!?全然…悠太は悪くないよ!平気だから。」

 私は悠太に微笑んでみせた。

 実は私の母は今、都内の病院に入院しているのだ。
私の家から10キロ程離れた病院に。
父は単身赴任、兄は上京して東京に居る。
だから私は今大きな家で一人暮らしをしているのだった。

 でも、寂しくは無い。
だって傍に悠太や悠太のお母さん達が居るんだもん。
それに、弱音を吐くわけにもいかないし。
頑張ってるのは、私だけじゃないから。
離れていても家族は繋がっているから。

 すると急に私の携帯が鳴り出した。

「…誰だろう…」

 私達を心配する誰かが電話を掛けてきてくれたのだろうか?
少々疑問に思いながらも私は電話に出た。
 私に電話を掛けてきてくれたのは、母でもなく、父でもなく、兄でもなく、
凄い存在の方からの電話だった。
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