となり。
気まずい空気が流れた。
(なに?この人…怖。)
あたしの明らかに動揺してる様子を見て、
「僕さ、ウソとかわかっちゃうんだよね」
マスターはそう言ってははっと笑った。
「…すいません」
なんだか恥ずかしくなってきた。
なんであたしはこんなとこを選んだんだろう。
「だから、さっきも言ったけど問題はないよ。キミにどんな事情があるかはわからないけど、人には隠したいことのひとつやふたつはあるもんだからね、僕はちゃんと働いてくれる人を雇いたいんだ」
「…はあ」
あたしのことを知っているわけではないらしい。
「早速明日の遅番の時間から、来れる?」
とりあえず、働かせてはくれるみたいで安心した。
「大丈夫です、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
手をさしのべられた。
マスターの薬指にはシンプルな指輪がはめられていた。