初恋

図書室

想像以上に、事は上手くいかないもので。



今日は、金曜日。
鶴城先生がうちの学校に来たのが今週のはじめだったから――先生に出会って、5日目。

教育実習の期間は2週間だから、先生との時間を、もう半分も過ごしたことになる。


こんなときだけは、土曜日と日曜日がうらめしい。

明日から2日、先生に会えないから。



隣の席の祐実ちゃんは、相変わらず5組の吉岡くんがかっこいいと騒いでいる。

どうやらもう、教育実習生の山本先生には飽きてしまったようです。


そんな祐実ちゃんを見てたら、放課後に図書室に来てる自分がバカらしく思えてくる。


土日をはさんでしまう分、
鶴城先生に会えない分――


少しでも先生に近づきたくって、

図書室から化学の本を借りようとしているあたし。


相変わらず、先生とは一言も喋れてないのにね。

バカだなぁあたし。



この想いは、恋なんかじゃなくて――単なる憧れっていうだけかもしれないのに。

まるで祐実ちゃんみたいに。



すぐに現実に引き戻されてしまうような、そんな想いかもしれないという自覚ぐらい、バカなあたしにもあった。
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