初恋
いつものように、何にも決まらずふたりで街をウロウロ。

散々迷ったあげく、あたしはネクタイを手に取った。


「――紫色は、今年一番人気のあるお色なんですよ」


店員さんがにっこりと微笑んだ。


「もう少しで大学卒業だし――きっと、使う機会も多くなるよね」


アキちゃんも隣でうなずいている。


小さな四角い箱に、くるくると丸めて収められたネクタイは――先生に似合いそうな、黒地に紫と白の斜めストライプが入ったもの。

箱にリボンがかけられていくのを見つめながら、アキちゃんがぽつりとつぶやいた。


「先生は卒業したら、やっぱり学校の先生になるのかな」


あたしもその言葉でふと冷静になった。


「教育実習でうちの中学来たんだから――きっと、そうなんだよね」


先生から直接そんな話は聞いたことがないが――勝手に、そう思いこんだ。

するとアキちゃんが、にやりと笑ってこちらを向いた。


「南高に赴任してきたりして!それこそほんとに――禁断の関係ね」


あたしたちは、そんなバカげた想像をして――無邪気に笑いあっていた。
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