初恋
本を開いたところで、内容なんて全く頭に入らない。


――こんなの、全然わかんないよ。
理科は好きだけど、ここまで深く入りこめません。


開いた1ページ目から、全く先に進まない。


先生、何してるのかなぁ。
もう帰っちゃった?

それとも、来週末にある研究授業の打ち合わせとかを、宮崎先生としてたりするのかなぁ。



来週こそ、鶴城先生と喋れますように。

次こそ、先生に話しかける勇気が持てますように。



ぼーっと宙を見つめていたが、誰かが部屋に入ってくる気配がしたので、急いで視線を本へと戻した。


なになに、アルミニウムイオンが?

――ていうか、イオンっていまいちよくわからないんですけど。
マイナスイオンとか、みたいな感じと同じようなもんなのかな。

それにしてもこの本、『中学生にもよくわかる』って、全然わかんないじゃん!

しかしそこで、あたしは名案を思いついた。

――これをダシに、鶴城先生に話しかければいいのよ!



『先生!この本、借りて読んでるんですけど〜...全然わかんないんですぅ』


......。
ダメダメ。そんな上手くいくはずない。
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