初恋
「聞きたくない――」


あたしは耳をふさいで拒絶した。


「先生にとっては、あたしの存在って――その程度のものだったんですね」


先生は、何も言わなかった。

ただ悲しそうに、あたしを見つめただけだった。


もう、どうしようもなかった。







無言であたしは車を降りた。

すぐに先生が追いかけてきて――あたしの手をつかんだけれど、あたしはそれをふりきって、逃げるように走った。


先生の車の後部座席には、赤い小さな箱の入った、綺麗な袋が見えた気がした。

あれは――あたしにくれるはずだった、クリスマスプレゼント?

それとも――





頭の中が痺れたようになって、もう何も考えられなかった。


先生は、もう追ってこない。





チャックの開いたカバンの中に、先生に渡すはずだったプレゼントの箱が――

役目を終えられずに、物寂しそうにたたずんでいる。



四角い箱が、涙でぼやけて――まるでイルミネーションのように、輝いて見えた。

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