初恋
久しぶりに会った先生の顔を見ただけで――あたしは泣きそうになってしまった。


連絡が取れなかったこの10日間が、あまりにも寂しくて。

あたしにはやっぱり、先生しかいない。

改めてそう気付かされる。



「ごめんな」


先生は暗い表情のままつぶやいた。


「いや、ごめんなさい――あたしが、もっと話を聞けばよかったのに」


「――おまえは悪くないよ」


そう言って遠くを見つめる先生は、なんだかいつもと違うように感じた。


妙な、胸騒ぎがする。


あたしの中に、不安がどんどん広がっていった。


「イブの埋め合わせ、いつかしましょうね」


――そんなはずはない、と、あたしは不安を振り払うように、つとめて明るく言った。


「――そうだな」


先生もようやく、少し明るい表情を見せてくれた。


大丈夫。

あたしは必死に心を抑えていた。





――不安でいっぱいだった。

先生が、あたしの知らないところへ消えていきそうで。

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