初恋
「――!!」


なんとも目覚めの悪い夢だった。

ドラマや漫画のような――なんてベタな夢だろう。


「はぁ」


あの誕生日の前日から、先生からのメールは来なくなった。

聞きわけの悪い私を嫌ってしまったのだろうか。



あたしは、大事な時に、自分の思っていることを素直に伝えられない。

謝らなくちゃいけないときでも、言い訳をしなきゃいけないときでも――あたしは、何も言えずに黙り込んでしまう。


「――はぁ」


大きく息をつくと、また涙があふれてくる。

こらえなきゃ、泣いちゃだめだと強く思うほど――ますます涙がこぼれ落ちてくる。


もう、どうしようもなかった。


完全にふたりの歯車が噛み合ってないのは――幼いあたしにだって痛いほどわかる。



さっき、夢のなかで――ひとり歩きながら、早く夢から覚めてほしいと願った。

夢のなかなのに、そんなふうに思うなんて、と、自分でも可笑しくなってしまう。



でも、もしこれが夢ならば――

また涙がこぼれ落ちる前に、



どうか、夢から醒めてほしい。


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