初恋

でも何故だか、ドキドキはしていない。

不思議と、落ち着いていられる。


「もうこの際、イオンってのが何なのか、あまり深く考えなくていいよ」


先生の声が、すぐ横で聞こえる。

すると鶴城先生は、私の目の前に腰かけた。


今までにないくらい、近い。

どうしよう。


「――まぁな、ほとんどすべての元素が、イオンっていうものになる性質を持ってるんだよ。ほら、聞いたことあるだろ？銀イオンとか」


「あ、はい」


理解しなきゃ！
頑張れ、零！


「土の中には、いろんな金属イオンが溶けこんでる。アルミニウムイオンも、金属イオンのひとつな。それを植物が、水や養分なんかと一緒に吸い上げて――」


は、話が難しい！


「植物の中の成分と合わさることがあるんだ」


「それって――植物には、なんも問題ないんですか？」


「ん――まぁ、よっぽどじゃない限り、多少ならそれほど問題ではない」


正直、具体的なビジョンが全く浮かばなかった。

よっぽど、あたしは難しい顔をしていたのだろう。
そんなあたしの目の前で、鶴城先生は笑いだした。