初恋
そこであたしは気がついた。


“あたし以外の”。


そんなとんでもない感情を持った自分に、あたしはショックを受けていた。


もう、とうの昔に――先生との関係は終わってしまった。

なのに、こんなにも心の中に先生が居座っているなんて。


「まだ期日までは時間があるし、ゆっくり考えてみなよ」


アキはそう言って、あたしの肩をぽんと叩いた。

ようやく我にかえったあたしは、小さくうなずいた。


「――雄太には、内緒にしといてね」


「もちろん」







アキと別れて、部室を出ようとする頃、タイミングよく雄太から電話がかかってきた。


『零は晩ごはんどうするの?』


「ん――まだ決めてないけど」


『じゃあ一緒に食べようよ』


「いいけど――今どこにいるの」


どうせ雄太のことだから、いつものように家でごろごろしてるに違いない。


だからあたしが材料を買って、雄太の部屋に行って――

今日は土曜だし、そのままお泊まりかも。


そんなことを想像していたのだけれど――


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