初恋
「あら、いらっしゃい!ゆーくん」


家に帰ると、しらじらしく母が迎えてくれた。


「お母さんこんばんはー!おじゃまします」


雄太はうちの母親のことを、“お母さん”と自然に呼ぶ。


「雄太くん!ちょうどよかった。将棋の相手をやってくれ」


「あ、お父さんこんばんは!いいですねぇ」


和室から、普段見せない笑顔で父が顔を出す。


娘そっちのけで、うちの両親は雄太がお気に入りだった。

あと、中3になる弟も。


「ゆーくん、あとで勉強見てよ!英語がわかんないから」


弟の亮介が二階から叫んでいる。


「はいはい〜めしの後になー」


雄太が来ただけで、うちの家は何倍も明るくなるような気がした。

別に普段が、家族が仲が悪いわけではないけれど、雄太が来ると、一段とにぎやかになる。


食卓に並んだのは、やっぱり予約しといた煮込みハンバーグ。


「おいしいですねぇ」


幸せそうな笑顔で雄太が言った。


「でしょう?零が作るのよりは格段においしいでしょ?」


お母さんはにやにやと笑いながらあたしを見ている。

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