初恋
さすがに8月も近くなると、上からの太陽の日射しと、下からのアスファルトの照り返しが激しくて――

あたしたちは逃げ込むようにファミレスの中に入った。


「空いてるお席へどうぞ」


平日ということもあり、店の中はけっこう空いていた。

でもおかげで、冷房からの風がすみずみまで行き届いている気がする。


「すみっこがいい」


あたしは雄太の腕をひっぱり、店のすみの席を指さした。


席に向かって歩いていくと、


「零ちゃん」


近くの席に座っていたカップルに声をかけられた。

驚いてあたしが振り向くと、そこにはひとみ先輩がいた。


――もちろん、その向かい側には先生の姿も。


「最近よく会うわね」


そう言ってひとみさんは笑ったけれど、あたしもおんなじことを考えていた。


どうしてこんなに、先生の顔を見る機会が増えていくのだろう。

この6年間、偶然会ったことなんて一度もなかったのに。



一方の先生は、あたしなんかには目もくれずに窓の外を見つめている。

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