初恋
祈るような気持ちだった。

語尾が小さくなっていくあたしを見て、先生はにやっと笑った。


「はい、頂けません」


「――あ、ですよねぇ...」


やっぱり!
これからどうしよう!

うう...


やたらしつこく粘って、先生に迷惑かけたくないし――なにより、嫌われたくない。


「すみませんでした。帰ります...」


あたしは来た道をショボショボと帰った。


「遅いから気をつけろよ」


最後の先生はやっぱり優しかった。





遠回りで歩いて、図書室の前を通ってみたが、

時間が遅くて、もう閉まっていた。


図書室にいたら、またこの前のように先生が来るんじゃないかって期待してしまって。

単なるあがきでしかないのにね。


「見事に玉砕か」


教室に戻って、ひとりきり、あたしはしょんぼりと帰り支度を始めた。

後悔ばかりが残っている。


もっと先生に話しかけて、たくさん仲良くなっておけばよかった。

先生の研究授業も、もっとちゃんと聞いときゃよかった。


もう、今日で最後なんだなぁ――


胸の奥がぐっと苦しくなった。
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