初恋
身体が熱くなって、息をするのも窮屈になる。


「...ぁっ」


大きく呼吸をする度に、自分のものじゃないような細い声が口から漏れる。


ゆっくりとあたしの上で動く先生は、まるであたしの身体のすべてを知り尽しているよう。

身体を重ねたのは、ほんの数回しかなかったのに。


「指輪...気にいってくれた?」


こくこくとうなずくと、絡めた指と指が、さらにきゅっときつくなったのがわかった。

左手の薬指を執拗に愛撫されて、身体が震えてしまうのが自分でもわかる。


この手を、離したくない。


「先生...」


ふと気を抜くと、やっぱり呼び方が“先生”に戻っている。

顔を見合わせてふたり苦笑した。


「ぼくは彰平ですけど」


「あ――しょう、へい...」


このぎこちなさがもどかしい。


「あたしと今ここにいること――後悔してません...?」


たまらなく不安だった。

先生に、後悔だけはしてほしくなかった。


「してない。むしろ――嬉しくて泣きたいくらいだ」


ふたり、どれほどの時間を隔てようと――

笑った顔は、昔のまんまだった。

< 268 / 280 >

この作品をシェア

pagetop