初恋
「おれは本気だよ」


あたしの頬を両手でつかみ、強引にこちらを向かせる。

その目は――笑っていない。


「おまえと別れたことを後悔してる。おまえが許してくれるんなら――もう一度...」


「や...っ、だめ...!」


その先の言葉を聞くのが恐ろしくて、あたしは必死に抵抗した。



先生からの、懺悔と告白。


嬉しくないはずがない。

でも今のあたしには――ただただ耳をふさぐことしかできなかった。



先生の気持ちに直に触れて――

これからの未来を、
雄太とのことも、
ひとみ先輩との問題も、

なにより、自分を、


見失ってしまうのが怖くなった。



抵抗するあたしを強い力でねじふせて、先生はあたしの膝を割って入ってきた。


「――やっ...いや...!」


どれだけ泣いても、先生はその力を緩めない。

むしろ激しさを増す一方だった。



でも、あたしを抱く先生の気持ちは痛いほどよくわかる。

あたしにも、同じ思いが胸の中でくすぶっているから。


もう、どうしようもないところまで来てしまったことは、あたしたち自身がよくわかっていた。

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