初恋
0.終わり
呼び出されて、久しぶりに部屋に向かった。


相変わらずの、狭いけれども家具の少ないさっぱりとしたワンルームの部屋が――

いつもの穏やかな笑顔とともに、あたしを迎えいれてくれる。


「話って――?」


「まあ、入りなよ」


大事な話がある。

そう言って、昨日の晩に電話をかけてきたのは雄太だった。


――大事な話。

あたしは昨日ひとりで、その内容を勝手に想像していたものだ。


まさか、別れ話だったりするのだろうか。

もういっそのこと、別れを切りだしてくれれば、なんて思ってしまう自分が情けない。


あなたを裏切ったあたしを――


いつまでも、そばにおいておく必要はないでしょう?


このまま雄太があたしを捨ててくれたら、どんなにあたしは楽になれるだろう。

別に、先生の胸へ戻るつもりは毛頭ない。

もう戻れないことも知っている。


ただ、雄太からも先生からも――すべてから、逃れたかった。


なんにも考えずに、ただ一日を無駄に過ごしていくような日々が欲しかった。


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