初恋
せっかく夏休みになったのに、あたしはひたすら机と向かいあっていた。

でも、教科書のとなりには、


鶴城先生がくれた、あの白い紙。


あまりにも手にとって眺めすぎて、なんかふにゃふにゃになってきちゃったけど。


「電話、かけてみようかなぁ」


けれどやっぱり、あたしにはそんな勇気はないのです。



先生も、今ごろ夏休みなのかな。
大学生の夏休みって長いらしいし、いろいろ遊んでたりして。


なにしてるのかなぁ。
また会いたいよ、先生。

ま、会ったとしても、きっとあたしは緊張して――うまく話せないだろうけどね。





うん...。

でも――



「かけよう!」


電話、かけるしかない。

先生との唯一の接点――無駄にするわけにはいかない。


「うん、頑張れあたし」


ケータイを、ギュッと握りしめて。





30分経過。


「ダメだぁ〜!」


11桁の数字を押して、

最後の通話ボタンがなかなか押せない。



自分の部屋でひとり、今度はケータイとにらめっこ。

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