初恋
それからあたしは、いろいろな手を使って、勉強会を断わろうとしていた。


『先生も忙しいんじゃないですか?ほら、二学期の期末テストみたいなのあるんじゃないんですか!』


『残念ながら、大学は試験は7月末と1月末にしかありませーん』



『私、風邪ひいてしまいました』


『じゃあ一週間延期してもいいぞ』



『数学の教科書、なくしました』


『俺が塾でバイトしてた時のやつ貸してやるよ』





やっぱりダメか...。
あたしはため息をついた。

先生に会いたくないわけじゃない。

そりゃあもちろん、会いたい。

だからこれはラッキーだと思うべきことなんだろうけど。


でも――


「先生と会うの、緊張するよぉ...」


先生にとっては、単なる家庭外家庭教師のつもりなんだろうけど、

あたしにとっては――


久しぶり好きな人に会う、夢のような舞台になっちゃうんです。


「どんなカッコで行けばいいのよ」


あたしは半泣きだった。

だって、私服はダサいし。かといって制服は先生が困るだろうし。

変にオシャレしていくのもヤだし。
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