初恋
着いたのは、少し山を登った展望台。


「――きれい!」


駐車場に車を停めてちょっと歩くと、急に木々が開けて、市内の街が目下に広がった。


「すごいですね!車やビルがちっちゃい」


「夜来ると、もっときれいなんだよ。ここからだとネオンや街の灯りがたくさん見えるから」


どうしてだろう。
先生との距離が今日は一段と近い気がする。


「さすがに門限付きの中学生じゃあ、夜景なんてそうそう拝めないだろうけどな」


先生はいたずらっぽく笑った。





帰りの車の中。

その後もいろいろと、先生は連れてってくれて――家路につくころには、すっかり日は落ちていた。


でもそのあたりから、あたしはあまり記憶がない。

車に揺られ、ぼんやりとしていたら――気づいたときには家の近くだった。


なんてったって、前日は一睡もしてないあたし。


『おれな、おまえの――』


でもなんだか、先生があたしに何かを言ってた気がするんだけど――


頭の中にもやがかかって、よく思い出せなかった。
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