初恋
そういえば。


「先生!今日の模試は――」


ふと、あたしは思いあたることがあった。


いつもの、先生の車の中での他愛もない会話の中で――

ふいに思ったこと。


――“先生”。


いつまで、先生なんだろう。

もう条南中の教育実習生でもなくて、あたしの彼氏となった今――

先生、って呼ぶのも、なんか変な気がする。


「先生って呼び方、なんか変ですよね」


思いきって話を自分から振ってみると。


「はたから聞いてたら、禁断の危ない関係みたいだよな」


確かに、先生はほんとは先生なんかじゃない。

ふつうの大学生。


「なんか他の呼び方してみろよ」


突然の先生のリクエストに、あたしは困ってしまった。


「えーと...」


そのまま、少し黙り込んだから――先生は怒ったように言い出した。


「ていうかお前、おれの名前わかってる?」


「もちろん!鶴城先生です」


「違う。下の名前だっつーの」


「あぁ、もちろん...」


そこであたしは、なぜか止まってしまった。

先生の名前は、もちろん漢字だって憶えている。
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