初恋
花火の途中で、先生に連れられて車に戻った。

でも意外と、駐車場からでもじゅうぶんに花火は見える。


「これでようやくふたりきり」


ルームランプが薄暗く照らす車の中――先生はにやりと笑った。


「なんか、恥ずかしいです...」


すると、ふいに先生にキスされた。

もう何度目かの――いまだ慣れぬキス。


「――」


でも今日はなんだか甘くて深い。


ようやくくちびるが離れて、あたしはほうっと熱い息をついた。

やっぱり、恥ずかしくて慣れない。


照れてうつむくあたしの隣で、先生は花火を見つめている。



「――来年は、浴衣な」


先生がつぶやいた。

あたしはちょっとびっくりして――でもすぐに、うん、とうなずいた。



嬉しかった。

先生の来年の予定の中に、浴衣姿のあたしがいる。







「遅くなってすみません」


予定の11時よりも早い時間だったのだけれども――

先生はそう言って、あたしのお母さんに頭を下げた。


「はじめまして――鶴城、彰平といいます」


目の前にいるお母さんは、韓流スターを見る眼差しになっている。





嬉し恥ずかし――夏の思い出だった。
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