秘密の★オトナのお勉強①
目をパチクリさせながら、あたしは伊藤さんを凝視する。
いつも通り、きっちりとスーツを着こなしている伊藤さんからは、ベテランの貫禄が滲み出ている。
「あの…どうしたんですか?」
「いや、中森さんが倒れたと隼人から聞きましてね」
「そ…そうですか」
という事は、伊藤さんはあたしを心配してくれて、楽屋まで訪ねに来てくれたという事。
なんだか、とてつもなく申し訳ない気がする。
「わざわざすいません…。あたしの不注意から起こった事なのに…」
「大丈夫ですよ、一度くらいはそんな失敗はありますから。
…例え、ヤリ手と噂される中森さんだってね」
「え…?」
突然変わった伊藤さんの声。
優しくて思いやりのある声が、一気に低くなった。
その事に驚き、あたしは咄嗟に伊藤さんの顔を見つめる。
…その表情はさっきとはまるで別人で、無表情の冷たいオーラを纏ったものとなっていた。
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