秘密の★オトナのお勉強①
「よし、セリフ覚えた」
「早っ!」
それから数分間黙り込んでいた貞永は、台本を閉じるなりあたしにそう告げた。
机の上に手帳を広げて、小西さんから渡された資料を基に今後の貞永のスケジュールをまとめていたあたしは、手帳から貞永へと視線を変える。
「よくこんなに長いの覚えられるね」
「たりめーだろ。俺を誰だと思ってんだよ」
「あー、はいはい」
適当に相槌を付くと、あたしは再び手帳に視線を落とす。
…その事が、貞永には気に食わなかったらしい。
「…あゆ、俺暇なんだけど」
「はぁ…?」
少し低くなった声に、あたしは恐怖を感じた。
…貞永は、機嫌が悪くなった時に、声が少しだけ低くなるのだ。
元カレとはいえ、この特徴的な癖はあたしの身体を震え上がらせた。
.