秘密の★オトナのお勉強①
いくら待っても楽屋に姿を現す事のなかった佐田さんに対して、あたし達はとうとう挨拶する事を諦めてしまった。
この間あった打ち合わせで顔合わせはしてるから、一応大丈夫だとは思うんだけど…。
「貞永、もう時間だから行って来なよ。もしあたしが佐田さんを見つけたら挨拶しておくから」
廊下を歩く貞永の背中を押すと、なんだか申し訳なさそうな表情をしていた。
「…出来れば、仕事上の事だから自分で挨拶しておきたかったんだけどな」
「でもしょうがないって。今会えなくても、製作発表の時に挨拶くらいは出来るでしょ?」
マネージャーとして、あたしはしっかりと貞永の気持ちを安定させてあげる。
これも、マネージャーの大事な仕事のひとつ。
貞永はあたしの言葉を聞くと、気持ちを切り替えたかのように笑った。
「じゃ、行くな」
「了解。あたしは少し別件の仕事があるから、それを終えたらすぐそっちに向かうから」
お互いに声を掛け合うと、あたしは今進んできた道のりを引き返す為に身体の向きを変えた。
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