雑食なんです、彼。
「……は?」
迷惑だ、と言いたげな顔で振り向く彼。
それにも構わず、あたしはあたしたちの前に立つ、か弱そうなメガネっこに叫んだ。
あたしの今の声に、その小さな両肩を震わせて途切れそうな声で
「だ、だけどっ……。あたしにはむりですっ」
震える声。
別にイジメテルわけじゃないけど、イジメテルような感覚に襲われた。
――――でも。
それでも彼女、愛海には3次元の恋愛を知ってほしかった。
肌で感じてほしかった。
…そんなチッポケな希望を叶えるため、愛海のクラス担任のあたしはこれまでたくさんの生徒を調査してきた。
“先生と生徒”っていう、禁断の境界線は踏みたくはなかったけど、
これが自分の最愛の教え子のためになるのなら……と思っていたのでどんな汚い手段を使っても、その境界線を踏みこえながら長い調査を続け、ようやく今日選抜された生徒が決定した。
……問題はこれから。
愛海が彼とうまく付きあう決意をしてくれるか、くれないかでこの調査の成果がでる。
これまであたしがやってきたことが、すばらしいことだってことが感じることができる。
「そんなことないわ」
優しく愛海の右肩に手をのせた。
このか弱い生徒は、あたしの今までやってきた調査のこと全体は知らない。
一部はあたしが彼女に話していたから、彼女は自分の決意に相当なプレッシャーを感じているはず。自分が「いや」といえば、あたしの調査は泡になり、「いいよ」といえば、あたしの調査に多大な成果が見出せる。
そう思うと、不思議とあたしは妖しく口角を上げた。
それはまるで、
悪魔のように――――。