僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
案の定、飛夏羽は頭の中で色々と考え、顔を真っ赤にしながら優都を見つめ
た。

「な、何だよ?」

 優都と目の合った飛夏羽は驚いて目を逸らした。

「なっ、何でもないよ!」
「飛夏羽?」
「本当に何でもない。」

 優都を目を合わせないようにしてしばらく歩いていると飛夏羽はマンホール
の蓋が開いているのに気付かず、滑りかけた。

「きゃあ!?」
「危ない!」

 優都は飛夏羽を押して、道路に飛び移った。

「大丈夫か?」
「あいったたた…鼻打ったぁ…うん…大丈夫だよ…優都は?」
「俺は大丈夫だよ。」

 優都は立ち上がってから飛夏羽を立ち上がらせた。

「…はぁ~…カップルかぁ…」
「え?」
「う、ううん!何でもないよっ。」

 飛夏羽はにやけながら呟き、また最後に顔を真っ赤にした。
本当に飛夏羽は素直であった。

「でも…何で穴だけ開いてたのかなぁ?蓋はぁ~?」
「さぁ…」

 そして、住宅地を挟んで反対側の道路に、3つの人影が見えた。
李麻、純、零の三人である。
純と零は手を叩き合って喜んでいた。

「いやぁ~、お疲れさん!」
「お疲れお疲れ!二人ともカップルになれて良かったよねぇ!」
「…何してるの?こんな所で…」

 急に後ろに来た飛夏羽の声を聞き、純と零は驚いてマンホールに落っこちて
しまった。

「助けて~!」

 その声が、マンホールでエコーされていた。

「あ~あ。」

 李麻は笑いながら落ちていった零と純に暢気に手を振っていた。

「…何やってたの?」

 飛夏羽は李麻を問い詰めた。

「あはは、穴に落ちかけたでしょ?大丈夫だった?」
「!?それでまさか…」

 李麻はにっこりと頷いた。

「ひっど~い!私あれで鼻打ったんだよぉ!?」
「あはは!ごめんごめん。でも…良かったじゃん。カップルになれて。で、そ
の優都は?」
「大丈夫~?」

 優都はマンホールの前で純と零を見ていた。

 李麻は優都を見ると驚いて飛夏羽の後ろに隠れた。

「…優都…居たんだ。」
「酷くない?居たよ。」

 李麻と飛夏羽が笑っていると純と零が濡れて戻ってきた。
幸いダイバー服を着ていたので、洋服が汚れる事は無かった。
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