僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
「…大丈夫?」

 飛夏羽は純と零の顔を覗きこんだ。

 二人は溜息を吐いてその場に座り込んだ。

 李麻は自分のバッグを持つと、立ち上がった。

「純、零。帰ろう。飛夏羽、優都。また明日。」
「じゃあね。」

 飛夏羽と優都は声を揃えて言い、笑い合って帰って行った。

「待ってよ~!」

 李麻に置いていかれた純と零は急いで李麻の後を追いかけていった。

 そして、飛夏羽と優都は飛夏羽の家の前に来た。
飛夏羽は玄関まで登り、鍵を開けてから優都の方に振り向いた。

「優都、今日は本当にありがとう。私の為に…タイマンはってくれて、嬉しかっ
た。」
「飛夏羽…」

 しばらく二人は見つめ合っていた。

 飛夏羽は優しく笑ってドアに手を掛けた。

「本当に…ありがとう。おやすみなさい。」
「…おやすみ。」

 優都は優しく笑うと自分の家へと走って行った。

「…ありがとう、優都。」

 飛夏羽も自分の家に入り、鍵を閉めて自分の部屋へと行った。

 部屋に入ると、飛夏羽はパジャマに着替えてベッドに座った。

 ふと顔を上げ、棚を見ると優都と中学生の卒業式のときに撮った写真が置いて
あった。
飛夏羽はその写真を取り、そっと胸に抱き締めた。

「…もっと…素直にならなきゃな。」

 飛夏羽が優都の写真を見て微笑んでいると、急にリビングにある電話が鳴り
出した。

「吃驚したぁ…誰だろ?こんな夜遅くに…」

 時計を見ると、もう11時を軽く回っていた。

 飛夏羽は急いでリビングに走り、電話を取った。

「はい、渡邊です。」
「…飛夏羽?」
「え?」

 飛夏羽は力が抜け、受話器をその場に落とした。
震えながら何とか受話器を取り、震える手を押さえながら耳に当てた。

「…お母さん?」
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