僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
「飛夏羽…久しぶりね。刹が東京に行ったのよ。だから…会えたら宜しくね。」
「そんな!無責任すぎる!あなたは、私に二度と会わないと…声も聞かないと、
そう言ったはずですよね!?答えてください!お母さん!」

 飛夏羽は母親に怒りを露にした。

 10数年前に居なくなった母親が、10年ぶりに自分の娘に電話を掛けてきた
のだ。

「…ごめんね。」

 プツッ…プー…プー…その音だけが、響き渡っていた。

 飛夏羽は完全に力が抜け、その場に座り込んだ。

「…別れたお兄さんなんて…知る訳ない…知りたくも無い…」

 未だに、電話の切れた音がリビングに響き渡っている。
飛夏羽は小刻みに震える手を押さえ、受話器をそっと電話機に置いた。

 飛夏羽の頭の中には、母親の声が、今も繰り返されていた。

『ごめんね。』

 飛夏羽の中に、小さな怒りが一つ出来てしまった。
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