僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
「…え?」
「…飛夏羽からのだよ…」

 竜牙は目を逸らしてそう言い残すと、急いで保健室を出て行った。

「何!?何!?何なの~!?」
「大人気無いなぁもう…」

 興味津々になって先を急ごうとする保梓を宥めるようにして、李麻と零は同時
につっこんだ。

「優都、皆へ…今日は本当にごめんなさい…」

 優都が手紙の内容を読み始めた。

「私…今日全部思い出しました。昔は虐待されていた事も…この肩の火傷が如何
して出来たのかも…きっと翔太の家には母さんやお兄ちゃんが待ってる…生まれ
てから出会って…今までずっと…迷惑を掛けて来てごめんなさい。でももう、そ
んな事…させないから。優都もこれでやっと自由になれる。皆に伝えて下さい。
李麻…心友で居てくれてありがとう。橘君…何時も相談に乗ってくれてたりした
よね。ありがとう。緒方君。何時も場の雰囲気を明るくしてくれて…ありがと
う。最後に…優都…私を愛してくれて…ありがとう…」

 優都が手紙を読み終えると、優都と保梓以外の全員が涙ぐんでいた。

「…馬鹿…馬鹿ぁ…こんな事言う位だったら…傍に居てよ…飛夏羽ぁ…」

 李麻は涙を床に零しながら泣き、その場に座り込んだ。

 純と零も涙を堪え、無理矢理涙を隠そうとしていた。

 優都は焦りながら飛夏羽の手紙を握り締めた。

「…飛夏羽…」

 保梓は全員を見つめ、椅子から立ち上がると、優都の肩に手を置いた。

「…帰りなさい、優都君。」

 保梓の急な判断に驚き、優都は保梓を見つめた。

「でも…」
「待ってるわよ、優都君が来てくれる事…飛夏羽ちゃんは…」

 優都は何かを決心し、頷くと急いで保健室を飛び出していった。

「…優都…」

 李麻は走って行く優都の後姿を霞む目のまま一生懸命見つめた。
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