僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
 その頃飛夏羽はと言うと、部屋で翔太の父親と、飛夏羽の実の母親との対面の
目前だった。

 10数年ぶりに再会する母親、飛夏羽の鼓動はどんどんと速くなって行き、翔
太の手を強く握り締めていた。

「…怖いのか?」

 翔太の問いに、飛夏羽は静かに頷いた。

「…怖いよ…本当は…会いたくない…だって…私が何するか…分からないか
ら…」
「………」

 翔太は飛夏羽から目を逸らした。

 飛夏羽は両手で翔太の手を握り、そっと呟いた。

「もしも私が何か仕掛けたら…止めて。何しても良いから…止めて。」
「…分かった。」

 翔太が頷いた瞬間ドアが開き、男性と女性が入って来た。

 女性は飛夏羽の前の椅子に座ると、深く頭を下げた。

「飛夏羽ちゃん…ごめんなさい…私は…」
「…お母さん?」

 飛夏羽はゆっくりと顔を上げて女性の顔を見た。
女性は飛夏羽にそっくりな顔つきをしていた。
飛夏羽の実の母親、渡邊 歩(あゆむ)である。

 歩は飛夏羽とそっくりな顔つきだったが痩せ衰えていて腕も直ぐに折れてしま
いそうな程細かった。

 それでも飛夏羽は気にせずに再会した母親に怒りをぶつけた。

「如何してあの時助けなかったんですか?助けていれば今頃、お父さんは…」

 歩は飛夏羽から目を逸らし、重たい表情で口を開いた。

「…あの時は…仕方無かったのよ…」
「仕方無いも何も無い!あの時お母さんがお父さんを助けていれば…見捨てなけ
ればお父さんは生きていた筈よ!何でっ…」
「それは私の命令だったからだよ、飛夏羽ちゃん。」

 翔太の前に座っている男性が飛夏羽に話し掛けてきた。
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