僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
 飛夏羽はそっと目を開けた。

 その後目を見開いて命の恩人を見た。

「せ、刹…兄ちゃん?」
「大丈夫?」

 飛夏羽はゆっくりと頷いた。

 刹は優しい笑顔を見せてから飛夏羽を地面に下ろした。

 渡邊刹は、飛夏羽の実の兄だ。
昔から飛夏羽を守っていて優しく、飛夏羽の尊敬する存在だった。

「学校行く?一緒に行っても良いかな?」
「う、うん…」

 二人は学校へ歩き出した。

「…あ、ねぇ飛夏羽。」
「はい!?」

飛夏羽は暫く黙って居た為、刹に急に声を掛けられ変な声を出して刹を見た。

 刹は目を白黒させて自分を見る飛夏羽を見て、噴出して笑った。
飛夏羽はまだ目を白黒させたまま刹を見ていた。

「驚きすぎ。…あのさ、何で俺の事覚えてたの?」
「…え?そ、それは…」

 飛夏羽は刹から目を逸らした。

「…これ?」

 刹は自分の頬の傷を押さえてみせた。

「…ごめんなさい。」
「謝らなくて良いって。」

 刹は優しく笑ってみせた。

「おーい刹~!」
「皆だ…」
「…お友達?良いね、最初から。」

 飛夏羽は初めて刹の前で笑って見せた。

「あ…」

 飛夏羽は頭を下げると急いで学校に走って行った。

 刹は飛夏羽の後ろ姿を見つめ、顔が赤くなっていた。

 刹の友達が走ってきて、刹の肩に自分の腕を置いてにやけながら刹を見てい
た。

「今の子彼女か?」
「!?そ、そんなんじゃないって!」

 刹は更に顔を赤くすると急いで学校に走って行った。
< 58 / 73 >

この作品をシェア

pagetop