僕の街には今日も雨（涙）が降る…。

　そして、暫くしてから保梓が戻ってきた。

「飛夏羽ちゃん、ごめんね。遅くなって…飛夏羽ちゃん？…飛夏羽ちゃ
ん！？」

　保梓は大きく開いた窓が目に入ってきた。
急いで窓に駆け寄り外を覗くと何も持っていない飛夏羽が走っていくのが見え
た。

「あ、飛夏羽ちゃん…何で…」

　保梓は深い溜息を吐いてから窓を閉め、ドアの鍵を閉めると急いで保健室に
戻っていった。

　保健室では優都が静かに眠るのを李麻達全員が心配そうに見ていた。

「姉ちゃん、優都大丈夫？」

　目をうるうるさせて李麻は保梓を見つめた。

「大丈夫よ。少し疲れていただけだと思うから。でも…熱もあるし今日は帰っ
た方が良いわね。先生に伝えに行って来るから純君と零君は優都君の鞄用意し
てあげて。」
「分かりました。」

　純と零は頷くと急いで教室に走って行った。

「…姉ちゃん、そういえば…飛夏羽は？」

　李麻の問いに、保梓は目を逸らして首を振った。

「ごめんね…何か…帰っちゃったみたいで…」
「え？帰ったって…」
「…俺のせいだよ…」

　李麻と保梓は同時に優都の顔を覗き込んだ。

「だ、大丈夫なの？」

　優都は頬を赤く染めたままゆっくりと頷いた。

「俺のせいって…何か心当たりでもあるの？」
「…分かりませんけど…でも…何となく…俺の顔…見たくなかったんじゃない
かな…ごほっごほっ…」

　優都は話しながら咳き込んだ。

「歩いて帰れる？」

　保梓は電話の前で優都に聞いた。

「…はい…」
「じゃあもう少しだけ待ってて。」

　保梓は職員室に電話を掛けた。

「…優都。」

　李麻はポケットから優都のネックレスを出して優都の手に握らせた。

「…これ…何で李麻ちゃんが？」
「ごめん…でも、お願い。持ってて？…ごめん…計画…だったんだ…」

　李麻は優都から目を逸らして言った。

　優都は李麻から渡されたネックレスを見て両手で優しく包み込んだ。