僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
「…だる…」

 一方優都はふらふらする体を引き摺りながら家への道を歩いていた。

 ふと川岸に目を遣ると飛夏羽がびしょ濡れになって倒れていた。

 優都は急いで飛夏羽に駆け寄り飛夏羽を抱き起こした。

「おい!飛夏羽!確りしろよ!」

 飛夏羽の体は冷え切っていて氷の様に冷たかった。

「…うっ…」

 飛夏羽は静かに目を開けて優都を見た。

「…優都?…何で…」
「…倒れてたから…普通放って置けないよ…」

 優都はそのまま飛夏羽を抱き抱えた。

「帰るんだろ?送っていくよ。」
「…ごめん…なさい…」

 優都は暫く無言で歩いていた。

 飛夏羽は未だに寒さに震えている。

 優都は飛夏羽を地面に下ろすとブレザーを脱いで飛夏羽に掛けた。

「…良いの?」

 優都は目を逸らして頷いた。

「…何が…あったの?」

 優都は目を逸らしたまま飛夏羽に聞いた。

 飛夏羽は俯いて黙り込んだ。

「…別に…話したくないなら良いよ。」
「ごめんなさい…」

 優都は敬語を使って喋る飛夏羽を一度見てから何か言おうとして黙り込ん
だ。

「…何?」
「…別に。じゃあ俺…帰るね。もう近くだよね?それじゃあ。」

 優都はあの日の夜の様に冷たく飛夏羽を突き放すと走って行った。

「…優都…優都!」

 飛夏羽は優都を呼び止めた。

 優都は立ち止まって飛夏羽の方に振り返った。

「…ごめん優都…ありがとう。」

 優都は首を横に振ると振り向かずに走って行った。

「…優都…ごめんね…」

 飛夏羽は優都のブレザーを握り締め、ゆっくりとその場に泣き崩れた。
< 64 / 73 >

この作品をシェア

pagetop