僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
「…ミャー…」

 子猫は飛夏羽の頬をぺろぺろと嘗めた。

「…ん…子猫…ちゃん?…ここ…保健室?何で…」

 飛夏羽が体を起こすと同時に廊下から怒鳴り声が聞こえてきた。

 飛夏羽は驚いてドアの前まで走って行った。
そっとドアに耳を当てると、翔太と優都の声が聞こえてきた。

「お前、まだ飛夏羽の事諦めきれないのか?大変だよな、好きな奴が傍に居る
と。」

 飛夏羽は涙を零しながら保健室のドアに手を掛けた。
そしてドアを開けた瞬間、優都からは意外な答えが帰って来た。

「もうあの女とは、無関係なんだよ。」

 優都の乱暴な言葉に、飛夏羽は絶句した。

「あ、飛夏羽?」

 翔太は飛夏羽を見て目を見開いていた。

「…私だって…無関係だと思ってるわよ…こんな奴…無関係に決まってる…」

 飛夏羽は不気味な笑みを浮かべながら優都を睨んだ。
目からは何故か涙が次々と流れ落ちてきた。

「…ごめんね優都君。迷惑ばっかり掛けて来ちゃって…」

 飛夏羽はそう言い残すと保健室のドアを思い切り閉めた。

 翔太と優都は飛夏羽が思い切り締めたドアを見つめて、唖然として立ち尽く
していた。

 飛夏羽はベッドへ行って、そのままベッドに倒れこんだ。

 嫌いなら、なぜ飛夏羽は涙を流すのだろう。
飛夏羽のこの涙は一体誰の為の涙なのだろうか?

 流れ続ける涙を飛夏羽は止めようとしなかった。
死んでも良いと…そう思っているのだろうか?

 何もかも如何でも良いと、飛夏羽はそう思っていた。

「…ニャーオ…」

 子猫は心配そうに飛夏羽に近づき、そっと飛夏羽の涙を嘗めた。

「…ありがとう…」

 飛夏羽はそっと顔を上げて子猫に笑顔を見せた。

 そして子猫を優しく抱き締めて涙を零した。
飛夏羽の涙は子猫にとって静かに降る暖かい雨の様に感じていた。

 飛夏羽は子猫を抱き抱えて立ち上がると、保健室の窓から木に飛び移って家
に帰ろうとした。

 最後に待ち受ける難関があるとも知らずに…
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