PEACE
さっきまでの草原とはうって違い、この古城の庭の木々達は荒れはて、噴水の溜まり水も泥が混ざり茶色く濁り、枯れた木の葉が浮かんでいる。
古城といえば、……焼けてしまったのかだろうか。
半分程崩壊し、表面には痛々しい焼け跡が見受けられた。
余程悲惨な大きな火事があったことを、物語っていた。
近くにこんな古城があるなんて、聞いたことがない。
いつからあるのだろうか。
なんでこんな姿になっているのだろうか。
奈久留の頭の中で、何度もそんな疑問がグルグルと巡る。
それと同時に、奈久留は違和感を覚えていた。
枯れはてた花や木々。
荒れた庭。
水の流れが止まった噴水。
壊れた城。
その全てに。
「なんだろう……。初めて来たのに、すごく、懐かしい感じがする……」
――ズキンッ
次の瞬間、奈久留の頭に激痛が走った。
奈久留はあまりの痛さに立っていられなくなり、地面にしゃがみこんだ。
ファルコはそんな奈久留の元へ駆け寄り、心配そうに見つめ、体をすり寄せてくる。
しばらくの間、奈久留はもがき苦しんでいたが、徐々にその痛みは消えていった。
「何? 今の……」
痛みは嘘のように消えていた。
奈久留は生まれて初めての感覚に、驚かずにはいられなかった。
すると、ファルコはいきなり奈久留の靴ひもを引っ張った。
「わ! 何?」
奈久留がそう答えると、ファルコは首を古城の方へ戻し、足を進めた。
「ついて来いってこと?」
奈久留も立ち上がり、ファルコの後をついていった。