PEACE
* * *
古城の中は、火事のせいで壁は黒く煤けていたが、天井に吊された沢山のシャンデリアは今だにその存在を主張している。
時折、天井が壊れ、そこから覗き込む青空はととも綺麗に思えた。
「キュッ」
ファルコに導かれるまま、回廊をどのくらいき続けていただろうか。
不意にファルコは、その足を突然止めた。
何事かと思い、ファルコを見ると、壁に飾ってあるものをファルコは見上げていた。
――肖像画だ。
肖像画は埃をかぶっていて古ぼけていた。
絵にはこの城の主だと思われる家族が描かれているようだ。
「これ……」
絵からでもわかる、とても仲むつまじそうな家族。
奈久留は、一番下に描かれている十歳ぐらいの小さな少女に、目が惹かれた。
胸が高鳴るのがわかる。
体が震える。
手に汗を握った。
無邪気な顔で笑っているその少女。
わかるに決まっている。
だって、アレは……
「私……――?」
思考が回らない。
瞬きすらも忘れていた。
自然に、震える手をゆっくりと肖像画に伸ばす。
まるで、何かに操られているかのように。
その時、後ろの大きな扉が勢いよく開けられた。
「誰だ!」
男の怒鳴り声がその場に響いた。