PEACE


* * *

どのくらい走ったのだろう。

いつもは城下町から城へ戻る距離なんてなんてことなかったはずだったのに。

それが今は、すごく長い距離のような気がしてならない。

奈久留はただひたすら、「早く城へ戻らなきゃ」という一心で走っていた。

何がこの国で起こっているのか、よくわからない。

だけど一刻も早く城に戻り、状況を把握したい。なんとかしたい。

奈久留は騒ぎに巻き込まれぬよう、古城の裏にある森林から城に向かって駆けていく。

しかし、城下町からの悲鳴が絶えることはなく、森林を走っている奈久留の耳には、段々とその声が大きくなってきているようにも感じた。

鳥のさえずりや、風に躍らされ聞こえてくる木のささめきが、どこか遠くから聞こえるもののように感じる。

(何で……。何で、こんなことになっているんだろう)

奈久留の頭の中をいろんな出来事が駆け巡る。

(今日の朝までは、いつもの活気がある明るい国だったのに)

朝の城下町の風景が瞼の裏に浮かび上がった。

いつも平和だった。

みんなが明るくて、優しくて。

これは一体、なんの仕打ちなんだろう。

目に見える風景が滲んでいく。

奈久留の頬を大粒の雫が濡らす。

上手く呼吸が出来ない。

奈久留は時々、噎せながらも、無我夢中で城へ向かって走っていった。

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