PEACE




(やっと、城に着いた……)

そこは城の裏口にあたる場所だった。

全速力で駆けてきたせいか、息が上がり、肩で呼吸を繰り返すしかなかった。

そして、ある異変に気が付いた。

(なんだか……、静かすぎない?)

街があんなに騒ぎになっているのに、城からはなんの声も聞こえてこない。

奈久留は急いで城の裏口の門を力いっぱい押した。

やはり人の気配がない。

「橘~?」

いつもなら、こうやって名前を呼べばどこにでも駆けつける橘だが、返答の声すらない。

――何かがおかしい。

不審に思いながら、奈久留が恐る恐る足を進めていった時だった。

「ひっ……!」

目の前に広がる光景に、奈久留は押し殺した声で小さな悲鳴を上げた。

「な、なんで……」

声が震える。

そこには、何人もの兵士達が血の海に埋もれている姿があった。

腰が抜け、地面に尻をつける。

思ったように呼吸が出なかった。

奈久留は思わず視線をそらし目を強くつぶったが、あの光景が頭から離れない。

鉄の臭いが嫌でもついてくる。

嗚咽感に襲われ、必死で抑える。

「大丈夫だ……」

温もりに包まれた。


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