PEACE
* * *
「堕落の印があると言っても、私は完全な暗黒ノ世界の者ではない」
服を着直した瀬梛は、そう話し出した。
「どういうことだ?」
雪夜も奈久留と同じようで、驚きを隠せないようだった。
「私の母は、確かに暗黒ノ世界の者だ。だが、父は明白ノ世界の人間なんだ。だからなのか、瀬裡に不思議な力が現れたんだ」
「何故、わざわざそんなことを話す?」
納得は出来た。
堕落の印がある理由、なぜかその印が薄い理由が。
だからこそ、雪夜は警戒を見せた。
「これから協力し合うんだ。包み隠さず話すのが礼儀というものだろう?」
瀬梛は笑顔で言った。
「雪夜、瀬梛さんを信じてあげようよ」
奈久留はどうも、瀬梛が嘘をついているようには思えなかった。
奈久留の説得もあり、雪夜も仕方なく落ち着いた。
「作戦は。作戦はあるのか?」
席についた雪夜は、話を切り替える。
「これを使うつもりだ」
そう言って瀬梛が差し出してきたのは、一つのイヤリング。
シンプルに綺麗な石が連なっているイヤリングだ。
「これがないと、瀬裡は力を使うことが出来ないんだ。今日私を襲ってきた奴らも、多分、これを狙っていたんだろう」
確かに綺麗な石だ。
だが、何故これがないと瀬裡は力が使えないのだろう。
そんな疑問が浮かぶ。
「これは母から預かったものでな。まだ幼かった瀬裡が、力の扱いをうまく制御出来なかったために、瀬裡の力をこの石に込めたそうだ。町長はどうやら暗黒ノ者からこの石と瀬裡を必ず、って言われているみたいでな。町長は何度も刺客を差し向けてきたさ。それほどこの石は取引では重要視されているみたいでな。だから、この石を町長のところに持って行く。奴らの目を逸らさせる。その間に、瀬裡を……助ける」
瀬梛はきつく、拳を握ったのだった。