PEACE
* * *
薄暗い。
そこは、牢屋のような石で出来た部屋だった。
「調子はどうですか? 瀬裡様」
鉄の棒で区切られたその部屋の外から、何人かの男を引き連れた男が来た。
「また、来たのですか」
部屋の中に閉じ込められた女――瀬裡が答えた。
「覚悟は決まりましたか?」
「私は、貴方達の元へは行きません!」
「往生際が悪いですね。私の知っている姫君にそっくりだ」
男は鍵閉ざされていた鉄の梯を開け、部屋へと入る。
手を鎖で繋がれ、吊されていた瀬裡は、入ってきた男に顎を持ち上げられた。
「貴女の体に流れている半分の血は、私達と同じなはずです。何を戸惑うことが
ありますか?」
「貴方達と私とでは、根から違う人間だわ。貴方達は……腐っている」
「そうですか。……そうですね。貴女にわかるわけがない。私達の苦しみが」
男は悲しげにどこかを見つめる。
「さて、もうそろそろ余興が始まります。貴方には……少し眠っていてもらいますよ」
口論の末、男は瀬裡の首の後ろ辺りを強く叩く。
人間の急所をつかれ、瀬裡はゆっくりと気を失ったのだった。